伊藤舞台照明の伊藤さん
昨日は伊藤舞台照明の仕事で日本舞踊の照明仕事でした。
ぱれっとの公演でも時々照明をお願いすることがある伊藤舞台照明さん。
伊藤さんは、田中舞台照明の田中恒さんのお弟子さんになります。
田中先生は日芸などで照明の教授をしていた方です。
その田中恒さんは、遠山静雄先生のお弟子さんになります。ちなみによくお世話になっている吉本さんのお父さん、もう亡くなられた吉本一郎さん(戦前照明の仕事をはじめ、徴兵されて満州、レイテと戦争を体験して復員、戦後すぐ、昭和21年には、東京で小牧バレエの照明をしていた方)が、劇場に遠山先生のかばん持ちをしていた田中先生の話をしてくれたことがあります。日本の照明界のおおもとを作った人たちといってもいいかもしれません。
専門は日本舞踊
。勿論、どんな照明でもこなしますが、一番得意なのが、日本舞踊なのです。
日本舞踊には、清元、長唄、端唄、小唄に大和楽など様々な形式があります。
昨日の現場は甲府のコラニー文化ホールの小ホールでした。
久しぶりに伊藤さんとお話しましたが、若い人もいて日舞の話になりました。
日舞には様々なルールがあります。
最近は、その伝承されてきたルールを知らない人が増えてきたという話でした。
例えば、日舞の歌には「おきうた」という前奏曲につく歌があります。
これは、これから始まる歌の内容を説明する、前説のようなもの、ですから、ここでは踊ってはいけないそうです。
オーバーチェアみたいなものでしょうか。
そこでは踊らないというのが、昔からの決まり事だとか。
また、屏風(とりのこ、金屏風、銀屏風)が本舞台にでているとき、これは舞台が室内という意味になり、その飾りの時には、花道は使わないとか。
勿論、その意味を知っていたうえで、屏風をあえて別な道具に見立てて使うとか、別な意味づけをする場合はまた別ですが。
日舞のドラマは、様々なその時代、時代の風俗をとらえたものであったり、様々な事件を題材にしていたりします。
ですから、歴史を知らないとならないし、勿論、時代時代の文化も知らなければならない。
曲のきっかけもそうだし、曲の始まり、終わりにもいろいろな決まりがあります。
そういったことを長い間経験して積み上げてきたのです。
しかし残念ながら、だんだんとそういったことが継承されなくなってきているという話をしてくれました。
そういった知識は、町を見るときにも楽しめるものです。
伊藤さんは立川の人ですが、八王子の芸者さんの舞台の仕事で、置屋に行かれたそうです。
そこで、置屋のある仲町、仲町という名称はたいてい昔、遊郭があったりしたそうです。
八王子の仲町もまたそうで、その名残で、黒塀が残っている一角があるそうです。
やはり独特の雰囲気があるという話でしたが、さりげなく歴史が残っているのを感じられるのも、その知識があればこそです。
やはり、知っていることで町の楽しみ方が増えるし、その世界が日本舞踊の舞台の世界につながっていくのです。
日本舞踊のドラマは季節、場所、時間、町そして時代と密接につながっている舞台です。
所作だけでなく、道具、小道具、衣装、すべてが記号で、意味があります。
それを知ることは、仕事をするうえでも大切ですが、生活を豊かにしてくれるものでもあるのです。
伊藤さん、もう75かな。積み重ねた知識をこれから若者に伝承してほしいものです。
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