演劇をすることと今現在
お芝居をするということは、
役について考えるということは、
ひとつひとつの命がそれぞれに生きていることを感じ、その生について考え、想像する作業だと言えると思います。
それは人だけではない、全ての命あるものについてです。
台本と向かい合い、出会う登場人物たち。
それぞれの個性、生き方、考え方、立場、それぞれの目に写る世界。
どのように世界が見えて、どのように感じるのか?
稽古場で探り、公演で感じる。
個について考えるということは、個をとりまく環境、個の存在している社会を考えるということでもあります。
社会の中でどのように存在しているのかということは役を考える上ではとても大切です。
でも考えただけでは役を掴むことはできません。
役の目で、心で社会を見て感じ、考えなければなりません。
演劇はアンサンブルです。
でも全体よりも個が大事です。
個の集まりがアンサンブルを生むのです。
個が全体に溶けてしまって個が見えなくなってしまってはいけないのです。
もっともこれはぱれっとでの考え方です。
個が全体に溶けてしまうような演劇もあるだろうし、そう言った表現をしているからといって悪いわけではありません。
僕たちは稽古の中でいかに個を見つけていくのか、その個が社会といかに関わっていくのかを考える作業をしています。それは、台本の中だけの話ではなく、そのまま今の社会との関わりを考えることでもあるのです。
台本の中のことを考え、想像するにしても、今、現在を抜きにして考えることはできません。
今現在を抜きにしない、というより、今現在を頭に置いて、今現在から出発して考えなくてはいけない。そう考えています。
舞台は常に今現在の世界と繋がっているのです。
世の中が急激に変化しています。
とても、今の流れはこわいと感じています。
演劇は個が大事です。
平和が大事です。
自由が大事です。
思想の自由、表現の自由、心の自由。
日本国憲法は、基本的人権を尊重し、思想の自由を保障しています。
平和を求め、主権を国民のものとしています。
とてもいい憲法だと思っています。
国民主権、基本的人権の尊重、平和主義。
演劇を今までしてきて、この3っつの大切さを学んできたような気がします。
この3つを否定してしまうような、改憲案が出てくることはとても残念です。
この3っつが変えられてしまうなら、もうこの日本は僕の育った日本ではなくなるような気がします。
そうなったらどこか外国にでも行ってしまいたい。
もちろん、お金もないし、そんなことはできないでしょう。
ここで生き続けるしかないのだから、この国が、別の国になってしまわないように、声をあげていくことが大事なのだろう。
僕らは演劇で、ひとりひとりが素晴らしく、大切なのだということを、伝えるのではなく、自ら感じてもらえるように想像力を刺激していきたいと思うのです。
そんな遠回りなことをしているうちに世の中はどんどん動いていってしまうかもしれない。けれど、自分の心で感じて、自分の足元から物事を考えるようになるのには時間が必要なのだと思うのです。
なんとしても、日本国憲法の考え方が、大切にされる社会であり続けてほしい。
そう願っています。
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