準備の話

先日、公演予定の小学校から電話を頂き、スケジュールの変更の相談を受けました。

その中で、前日の準備を当日にしてほしいとの希望がありました。

実は学校開放があり、市民に体育館を貸し出していたことが後からわかり、準備を当日のみにしてもらえないかという依頼でした。

小学校で公演している劇団の多くは当日の仕込みで公演するのが一般的です。

きっと前日に準備させてほしいなどと言う劇団は今までなかったのだと思います。

依頼された地域では、一日に2校、移動して公演してもらいたいという話で最初お問い合わせをいただきました。でも、一日に2か所、移動しての準備ではぱれっとの舞台は組みあがりません。やってやれないこともないでしょうが、舞台をきちんと作りたいので、一日一校にしてほしいとお願いさせていただきました。

人数の少ない所は35人しかいなかったかな。

35人のために一日の公演ではもちろん赤字になってしまいます。

それでも全体として赤字にならなければ、よしとして、たとえ少ない人数の学校であっても他の学校と変わらない舞台を少しでもよい演劇体験をしてもらいたいのです。


もう30年くらい、この学校巡演の仕事をしています。

学校巡演と、普通の公演、それから舞台スタッフの仕事で様々な舞台づくりに参加して生活してきました。

他劇団に参加していたころに、一日に移動して2校での公演というのは何度か経験しています。とてもたいへんです。たいへんなだけでなく、一日に移動して2か所で演劇公演をするということは、舞台は簡単なものでなければなりません。

役者も、公演場所に馴染むといった時間などあるわけもなく、怒涛のごとく準備をして芝居をして片付けるということになります。

なぜそんなことをするのか?

理由はふたつ。

一つ目は、

お金です。

儲けるためにはそうしなければならないからです。

収入が少なければ、劇団経営は難しいのです。

そして児童数の少ない学校は予算も少なく、劇団として赤字をださないための方法として、

舞台を単純化して、すぐに準備できるような形をとるのです。

二つ目は、

学校が時間を有効に使いたいからです。

どうしても舞台を創るのに準備時間が必要という感覚があまりないのです。

それは仕方ないことです。だってこれまでの劇団は準備時間が短いことが売りになっていたりするし、そもそも舞台を組み上げると言う感覚はないのですから。

舞台に立っている人だって、劇場なら準備時間なんかなくてもスイッチを押せば照明がつくと思っている人がいるくらいですから。

また、ある座長に言われたことですが、学校巡演は大変な仕事で、辞める人が多いので、舞台を組み上げるのに覚えるのに時間のかかるようなことをしていては、やっと覚えたら辞めてしまうのじゃやってられない、採算が取れないといわれたことがあります。


といった理由から、効率と儲けを考えると準備は簡単な方がいいということになります。

それでいいのか?確かに儲けなきゃ、食べていけないのは事実です。

でも舞台人として創り出したい世界があります。

ぱれっとは、ひとつひとつの舞台を丁寧に作りたい。

できる限りの努力をして、その場その場で工夫していい舞台を創りたい。

舞台は役者だけが表現をしているわけではありあせん。

音響も照明も道具も、そして会場もすべてが表現するものだと思います。

決して、派手ではないかもしれません。

シンプルで最低限に見える舞台かもしれません。

でも丁寧に大切に活き活きした舞台を創り上げたい。

そう思っています。

前日に準備させていただくのは、それらの目的のために必要なことなんです。

またよりお芝居を身近に感じてもらうためにする前説の内容を考える為のも前日に学校にいく意味があります。

その学校の子どもたちが見ているもの、当たり前にあるものの中から視点をかえた見方や想像につなげ、公演するお芝居と日常とがどこかで繋がりたい。

お芝居の世界が遠い別世界の話ではなく、どこかで自分たちの日常と繋がってほしい。

その時気づかなくても気づくことがあってくれたらいい。

そんな思いで毎回前説という部分を作っています。

準備のあと夜トークを作り、朝、舞台の準備を終えたら、前説を稽古して、それからランスルーをすることにしています。

そうやって少しでもその場の空気を吸い、いい舞台を創れるように努力を重ねています。

経験が豊富だから、簡単に素早く舞台が創れるというのではなく、

経験があるからこそ大事に舞台を創りたいと考えているのです。

勘違いしていただきたくないのは、こう書いているからといって、準備時間の短い劇団が手を抜いているというわけではありません。

それぞれ大事にしているところが違うのです。

どうか、ご理解いただけたら幸いです。

劇団ぱれっと

どんな空間でも素敵な劇場に。心に残る舞台をどこへでも!

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