祇王の話
先日、岡橋さんと鎌倉へ出かけた折のこと、訪問先の方がお能好きの方でした。
岡橋さんもお能を稽古されているので話題はお能の話に。
「藤戸」というお能をご存知の方も多いと思いますが、作者不詳のこの作品は、源平の合戦のおり、源氏の佐々木盛綱は島に渡る浅瀬を探し、地元の漁師に案内させます。場所がわかると、敵にばらさないようにするためにこの漁師を殺してしまいます。
見事に功をあげて恩賞として領地をもらい、領地にやってきて、領民の訴訟を受けようとします。すると、一人の老婆がさめざめと泣いています。
わけを尋ねると、猟師の息子が殺されたことを話ます。
佐々木盛綱は、墓を建て、供養します。すると、竜になった漁師がこれでやっと成仏できると去っていく。
そんなお話です。この作者が世阿弥ではないのかなというのが岡橋さんの説。
話題はその時代に権力者に対して訴えるこの老婆の強さと、それを舞台として作る。
これは当時はよほどの勇気が必要だったのではないか。よほどの覚悟が必要だったのではないか、そして今に伝えらていることのすごさといった話になりました。
それから平家物語の「祇王」。
清盛の寵愛を受けていた白拍子の祇王が、仏御前が現れて、捨てられ、寺に入ります。
そこへ仏御前が訪ねてきます。仏御前は剃髪していて、祇王を追い出すきっかけとなったことを心ぐるしく思っていたことを話ます。
祇王は、捨てられて、母と妹と共に暮らしていましたが、ずっと心の中では仏御前を許せずにいたのです。
仏御前の心の内を聞いて、和解し、4人で祈りながら暮らします。
時の権力者に翻弄されるこの話にとても惹きつけられている岡橋さんの語り口はとてもよかった。鎌倉の田楽というお店(ここは岡橋さんが20歳のころから通っているとのお店なのですが、囲炉裏がひとつだけのお店です。席は10人も入れば一杯、囲炉裏の炭火が一番のごちそう。囲炉裏の炭火でいろんな食材を田楽にしてくれるお店です。)
囲炉裏の炭火にあたりながら、生き生きと語る岡橋さんを見ていると祇王というドラマをどんな風に創りだすのか。
岡橋さんは70歳。これまでの積み重ねが味わい深い、しっかりと心に響くドラマを創り出してくれることだと思います。
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